Beast Love
青龍院くんの勉強の教え方は、とても丁寧だった。
たった1日で自分の持ってる知識量が増えたって、自覚出来るくらい。
そして秒針まで寸分の狂いなく、18時30分ぴったりに、勉強会は終了した。
誰に言われるわけでもなく、テーブルの上に広げていた教科書をサッサと片付けて玄関に向かうマサト達の背中を、慌てて追いかける。
「ねぇねぇ、ちょっと、なんでそんなに急いでるの?」
「あー、トオルの親父が結構厳しいみたいでな。自分の息子が俺らみたいな下等人種を相手にしてたら、あんまり良い顔しねぇらしい」
……友達と喋るのにも、親の許可がいるってこと?
それが当たり前だとでも言うように普通に説明してくるマサトに首を傾げていると、玄関まで見送りに来ていた青龍院くんが、「悪いな」と申し訳なさそうにしている。
「もうすぐ親父が病院から帰って来るから、マサト達は俺に気遣ってくれてるんだよ」
暗い影を落としている学年トップの男子生徒は、なにやら複雑な家庭事情を抱えているようで。
私はそれ以上なにも返さず、ただ「今日はありがとう」とお礼を述べるしか出来なかった。