Beast Love
「今から親と相談して行きたい大学や専門学校を決めて勉強すれば、何にでもなれるのよ、貴方たちは。最初から決まっていないの、自分の気持ちさえ固まれば、何にでもなれるの」


宇佐美先生は、私の真っ白な進路希望調査表に手を添える。


「自分の人生は、自分で決めなさい。でもね、方向性が定まらずに迷ってしまったら、まず自分自身を見つめなさい」


何がしたいのか、どんなことが好きなのか、何にやり甲斐を感じるのか。


将来を考える際には、自分自身を見つめなおすことが大切になってくるらしい。



「そして期末テストで平均点を取る、休日に大学の見学会に行く……何でもいい、小さな目標を決めなさい。天音さんのペースで目標を達成して、また目標を設定して、達成することを繰り返しなさい。その繰り返しがやがて、天音さんの人生を彩る道になっていくからね」


「私の人生を彩る、道に…………」


長細い指に挟まれた進路希望調査表を、ぴらりと返却される。


「それじゃぁ、週末までの目標。『自分の長所と短所を、この裏に書いてくること』。いくつでも挙げて良いわよ。天音さんの友だちやおばあちゃんからもアドバイスを貰ってもオッケー」


手元に返ってきた用紙に、一抹の不安を覚える。


そんな私の胸の内を見通してか、オネェ系教師は「大丈夫よ」っと声を掛けてくれた。


「そこから先のことはまた先生と一緒に、考えましょうね? 悩んだり煮詰まったら、いつでも相談しに来なさい。天音さんとのガールズトーク、先生楽しみにしてるから」


「はいっ! ありがとうございます」


用紙に自分の未来が書けた訳じゃないのに、不思議と心は晴れ晴れとしていた。



(宇佐美先生って、ただのオネェじゃなかったんだ)


そう感動していると、ぞくりと肌に鳥肌が。


「……天音さん? 口から本音が出てるわよ?」

「すっ、すみません!」


弾かれたビー玉みたいに私はその場を急いで離れたのであった。

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