Beast Love
──…… 天音 希が出て行った、職員室では。
「マサト、貴方の気持ちはここから一切変わってないのね」
「っす」
鳳凰 正人の進路希望調査表を前にして、宇佐美教員は頭を抱えていた。
「『クラス全員で卒業』、か……。これが貴方の望む未来なの? 親御さんともちゃんと話してる? 海外に行って設備の整った場所に行けば、貴方は、」
「宇佐美ちゃん、何言われようが俺の意思は変わらねーよ」
鳳凰 正人は、微動だにせず真っ直ぐに立っていた。
己の意思の硬さを、表現するかのように。
頑固すぎる生徒を前にして、綺麗に形作られた唇からは溜息が溢れる。
「…………そう。ひとまずこれは預かっておくけど、もう一度考え直してね」
担任から念を押されるも、正人は何も答えず、背中を向けて職員室を後にした。