Beast Love
「進路希望調査表は、まだ……出してない」

「なんだと?」


母が夕飯の支度をしている生活音が、静寂の合間に広がる。



「出してないだって?」




やっと俺を見た瞳には、苛立ちが滲んでいた。



「『医者になるために進学する』と書けと、前々から言っているだろう。透は父さんの跡を継ぐんだ、何度言ったら分かるんだ」


違う、俺は医者なんてなりたくない。


俺自身が本当に、目指したいのは…………


「それに、母さんから聞いたぞ? また出来損ないのクラスメイト達の勉強を見てやっているそうじゃないか。将来有望なバスケ部エースの子以外、クズとは付き合うなとあれほど言っただろう」



自分の中で、プツンッと何かの切れる音がした。
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