Beast Love
「やっべぇ。家を飛び出してきた時に、財布、置いてきた」
普段はクールな男子が焦っているのを見るのは、なんだか新鮮だ。
(って、そんなことを思ってる場合じゃなくって、)
「青龍院くん? 良かったらさ、今からウチに来る?」
そう尋ねれば、難色を示される。
「いや、いいよ。急に俺が押しかけても、天音さんの家族さんにも悪いし」
「いやいや、いいよ気にしなくて。私の家さ、おばあちゃんとふたり暮らしなの。今日は餃子作るんだけど、ふたりじゃ食べきれないから、いつもご近所さんにお裾分けしてるんだよね。だからさ、餃子食べに来てよ、ねっ?」
それに、悲しそうな顔をしてこんな場所でひとりで佇んでいるクラスメイトを、放ってはおけないし。
っという内心は、そっと胸のうちに閉じ込めておく。
「うわっ、天音さんっ、?」
渋る彼の手を引き、半ば強引に傘に入れてあげる。
「よっしゃ、そうと決まればレッツラゴー!」
「俺、まだ行くって言ってないんだけど…………」