Beast Love
ひとつの傘の下で身を寄せ合いながら家に戻って来ると、お隣さん家のおばあさんが慌てて荷物を抱えながら玄関の鍵を開けようとしているのが見えた。

「あ、中川さん家のおばあさんだ」


荷物が邪魔をして鍵を開けるのに手こずっており、綺麗な着物がどんどん雨に傷付けられている。


ムズムズともどかしさが、心に降り積もっていく。



(手伝ってあげなきゃ)


頭で律するよりも先に、身体が動き出していた。


やっぱり私は、困っている人がいたら助けずにはいられないらしい。



「ごめんっ、青龍院くん。ちょっと家に入る前に寄り道してくる。傘、持っててくれない?」

「お、おいっ。どこに行……」


青龍院くんのために傘は持って行かずに、そのまま彼に預けておく。


パシャパシャと靴底で水溜りを跳ね上げて、私はおばあさんに一目散に近づいた。

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