Beast Love
無事に家に着き、濡れた傘を玄関に置いてある傘立てに入れながら、青龍院くんに先ほどのお礼を述べる。



「さっきは手伝ってくれて、ありがとう。青龍院くんに優しいって言ってもらえて、ちょっと自分に自信が持てたよ」


短所ばかりが際立って見える私に、『優しい』だなんて言ってもらえたことが、素直に嬉しかった。


けれど彼はさらに女心を落とすような一言をこぼす。


「そう。……天音さんを元気にしてあげれるなら、何回でも言ってあげるよ」


あまりにも自然な笑顔でそんなことを言ってくるもんだから、思わずこっちの方が小っ恥ずかしくなってくる。


「あ、ありがとう。うん、あ、そうだ、制服についた雨を拭くタオル取ってくるから、ちょっとここで待ってて」



慌てて靴を脱ぎ捨ててその場から離れると、青龍院くんも自分の言った台詞に照れ始めたようで、手のひらで口元を隠していた。



「……はっ、俺、なに言ってんだろ……」





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