Beast Love
材料を手に入れたおばあちゃんは、水を得た魚のように鼻歌を歌いながら、夕飯の支度を進めていた。


その傍らには、餃子の皮にタネを必死に詰め込む私と青龍院くんの姿が。


「…………結局、俺も手伝うんだな」

「当ったり前でしょ! 働くもの食うべからず、だよ?」


さっきまでの気恥ずかしさをかき消すように、なんやかんやと言い合いながら餃子を包んでいく。


「……へぇー、餃子ってこういう風にひだ作って包むんだな」

「そうそう。このヒラヒラが無いと、火を通した時に皮が膨張して破れて、肉汁が逃げちゃうからね」


「ふーん。理にかなってるんだなぁ」


まるで風変わりな動物を見るような目で、マジマジと興味津々に餃子を見つめる青龍院くん。



「天音さんと一緒にいるとさ、俺は本当に勉強しか知らないんだなって実感するよ」


餃子の皮についている白い粉をふたり同じ頬につけながら、ふぅーっと息を吐く。


「あははっ。逆に私はなんでもそつなくこなせる青龍院くんが羨ましいけどなぁ」


「そうか? あ、君付けしなくて、もう青龍院って呼び捨てで良いよ。下の名前でも良いけど」


餃子がひとつ完成するごとに、ふたりの距離が近づいていく……そんな気がするのは、私だけだろうか。


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