Beast Love

家にたどり着き、そのまま数分間立ち尽くす。



「それにしても、勢いよく飛び出した分、気まずいな……」



とは言え、ずっとこのまま外に立ち続ける訳にもいかない。


「ただいまー……」



ガチャリと重い気分で玄関を開けると、そこには見慣れた背中が3つ並んでいた。


「あいつの夢を、認めてやってください! お願いします!」


馬鹿でかい声で親父に頭を下げているのは、マサトで。


「トオルは、ほんまに教師を夢見て頑張っとるんです」


招き猫みたいに手招きしているのは、糸目のヨウで。


「俺からも、お願いします」


礼儀正しく頭を下げているのは、恐らく部活帰りのアキラで。


「なっ、なんでお前ら、此処に……」



困ったような顔で彼らに腕組みしていた親父は「トオル、帰って来たのか!」っと目を丸くし、母は安堵の息を吐いた。


「母さんが、トオルの家出先に心当たりのある彼らに連絡を取ったら、なぜか家に押し寄せてきてな……。居場所も教えず『息子さんの夢を認めてやってください』の一点張りで、困っていたところだ」


嫌気がさしたような父の顔色から、彼らがどれだけ説得していたのかが安易に想像できた。


目頭に、熱いものがこみ上げてくる。
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