Beast Love
玄関先から出て行くマサト達に礼を告げると、「俺らの努力が無駄にならないように気張れよ」っと檄を飛ばされた。


静かに頷いて扉を閉め、両親に続いてリビングへと向かう。


テーブルの上には、白紙の進路希望調査表が。


「……気持ちはよく分かった。トオルの好きにしなさい」


父はそれだけ言うと、風呂に行ってしまった。


あっさりと終わった話し合いに目を丸くしていると、背中越しに母が話し掛けてくる。



「うふふ。トオルのお友達が粘ってくれたおかげね。トオルが帰ってくるまでお父さん、てんてこ舞いだったんだから」


口角を上げて話す母は、どこか嬉しそうだった。


「いいお友達ができて良かったわね、トオル」


消えないように、テーブルの上にあったボールペンで進路希望調査表に文字を書く。


『教師になるために、○○大学への進学を希望』


文字の上に、ひと粒の水滴が落ちる。


……俺が、成長しているんじゃない。


俺自身が彼らに、成長させてもらっているんだ。



(教師になるってそういうことなんですよね、宇佐美先生……)


「……みんな、ありがとな」


ポタポタと涙の滲む用紙に描かれた夢は、決して消えることはなかった。
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