Beast Love
***



翌日の放課後、私は進路希望調査表の裏に自分の長所と短所を記入して宇佐美先生の元へ急ぐ。


「先生! 書いて来ました!」

「あら、早いわね。天音さんにはどんな長所が見つかったのかしら?」


細長い指でぴらりと用紙を裏返される。


「短所は、『後先考えずに行動してしまうこと』。長所は……『人に優しくできること』。いいじゃない」


実は希望する進路も書いたんです、と付け足す。


「あら! ホントだわ、表に希望する進路も書いてるじゃないの」


ドキドキとしながら、宇佐美先生の反応をチラチラと確認する。


私の希望する、進路は…………。


「えーっと、希望する進路は……『介護福祉士を目指して、専門学校への進学を希望します』、ね。素敵じゃないのっ!」


えへへ、っと毛先をくるくると回していると、先生から厳しい言葉も飛んでくる。


「 ……でも、水を差すようで悪いけど、介護業界は大変よ? 本当に、この進路でいいの?」



介護は優しい気持ちだけでやっていけるほど、甘くはない。


耳が痛いくらいにそんな声は、よく耳にする。


……でも。



おばあちゃんの屈託のない笑顔や、トオルくんや近所の人から『ありがとう』の言葉をもらった時の気持ちを、思い返す。
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