Beast Love
「トオルくんも今日出すんだ、それ」


「まぁ、そうだな。やっと決まったんだ、進路が」


大切そうに用紙に目をやる彼は、以前にも増して柔らかな雰囲気になっていた。


新品でゴワついたタオルが、使い慣らされて肌触りが良くなっていくような。


一夜にしてここまで人って変わるものなんだなぁ……っと、感心してしまうくらいに。


「ふふっ。”いいこと”があったんだね」

「ああ、ある人たちに助けてもらったんだ」


そう言ってトオルくんは廊下の隅から騒がしい声を撒き散らしながら近付いて来るマサト達に、目をやる。


「あいつらに助けてもらったんだ。だから、あいつらが困ってる時は助けてやろうって思うよ。……それに、」


そこで美しく形作られた瞳が、私を見る。


グイッと袖を引っ張られ、顔が急接近する。



「天音さんにも、助けてもらったから……困ったことがあれば、いつでも力を貸すよ」


君が欲しいと言わんばかりの、挑発的な瞳。


耳元で囁かれると同時に、5時を知らせるチャイムが、校内に鳴り響く。
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