Beast Love
「じゃぁ、俺は職員室に用があるから」



あっという間に姿を消してしまったトオルくんは、私に不思議な余韻を残していった。



(………いま、キスされそうになった?)


触れそうで触れなかった唇に、指を当てていると。



「ポチ公、なに突っ立ってんだよ? 邪魔だ」


スクールバッグでお尻をボフッとド突かれ、バクバクと高鳴る心臓が一気に冷静になる。


「マサト……くんは、なんでもう少し優しく声を掛けれないのかなぁ?」

「お前にもうちょい可愛気あったら、優しくできる気がするわ」

「やかましいわ!!」


頬を膨らませていると、ゴツい人差し指が躊躇なく突いてくる。


ブスゥーッと不細工な空気の抜ける音と共に、目の前の男子からはやけに怖い声が。


「……っつか、なに? お前さ、今、廊下でトオルとイチャついてなかったか?」
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