Beast Love
「まぁ、今日は勉強教えるって言っても天音さんだけだし、別に部屋でもいいよ」


トオルくんはそれ以上なにも答えずに、制服を脱いでハンガーにかけていた。

……ノリでついてきたけど正直、学年トップの彼とふたりきりになるのは、今回が初めてである。


(……あれ? いつもどうやって喋ってたっけ? どんな顔してたっけ、私)


緊張で頭の中が、ぐるぐると回り始める。


(男子とふたりきりになるなんて、軽率だったかな……。軽い女とか思われてたら、どうしよう?!)


顔を真っ赤にして俯き、もどかしい静寂に耐えていると。


「ふっ、あははっ」

柔らかな笑い声が、室内に響く。


「天音さん、可愛い。俺に緊張してるの?」


挑発するかのように目と鼻の先に近付いてきた甘いマスクに、心臓がキュッと縮こまる。
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