Beast Love
「そっ、そんなわけないじゃーん」
表情筋がうまく、動かない。
巧みな言い訳が思い浮かばない。
「そんなこと聞いてくるってことはさ、トオルくんは好きな人いるってことなんじゃないの?」
我ながらうまく躱せたと思う。
彼は狼狽えることなく、「いるよ、好きな人っていうか気になる人」っと即答した。
そこでズイッと一歩、近寄られる。
「えっ、どうしたの? 急に立ち止まって……」
街灯の下でふたり足を止めれば、目と目が合ってしまった。
「俺が気になってる人は、……」
酸素を吸い込む音が聞こえた、その瞬間。