Beast Love
「ありがとうございましたーっ!」


近くにあるガソリンスタンドから、やけに馬鹿でかい店員の声が聞こえてきた。


張り詰めた私たちの空気を裂いて、その声は夜空に木霊する。


犬みたいにピンッと張った耳が、反響する音を拾い集める。


「あれ、この声は……マサト?」


まばゆい光を放つガソリンスタンドに視線を向ければ、帽子を取って車に一礼する彼の姿がそこにあった。


マサトもこちらに気がついたようで、「おー」っと片手を上げる。


「ポチ公とトオルじゃねぇか。あー、勉強会の帰り?」


なぜか目線を外したまま言葉を発さないトオルくんに代わって、私は素直に頷く。

「うん、まぁそんなとこ。っていうか、ガソリンスタンドでバイトしてたんだ」


初めて見る、働いているマサトの姿に妙に緊張してしまう。


作業服や仕事服って、こんなにも異性を魅力的にしてしまう効果があるのかと思うほどに。


「ああ、俺ん家おふくろとふたり暮らしだから、金要るんだよ。ちなみに向かいのビルにあるカラオケ店で、ヨウがバイトしてるぜ?」


ビルを見上げると、受け付けのある階からこちらに向かって手を振る白虎町くんがいた。



そうか、だから今日はマサトと白虎町くんは教室から早々に帰宅していたのか、っとひとりで納得する。


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