Beast Love
真っ赤な作業服で乱雑に汗を拭うマサトの背後から、バイトの先輩らしき人物が近づいて来た。


「鳳凰ーっ! お前またバイト中にナンパしてんじゃないだろうなぁ?!」


「ちょっ、いつの話してるんスか先輩。俺がナンパしまくってたの、1年くらい前の話っしょ」


親しげに絡んでくる年上の男性は、私の目の前まで来るとニヤッと口角を上げる。


「なになに、じゃぁこの子はマサトの彼女? はぁはぁ〜ん、だからお前さん最近落ち着いたってわけ?」


「はぁ? 誰がこんな芋子を彼女にするかよ」


バッサリとぶった切られ、こちらも口を尖らせて反論する。


「はぁー?! 何勝手なこと抜かしてんのよ!? コッチだってねぇ、あんたみたいな暴力男、願い下げだわ!」


「俺がいつお前に暴力振ったんだよ」

「今まさに、現在進行形で言葉の暴力振るわれてるわよ!」


やいやいと喧嘩を始めた私たちを他所に、バイトの先輩は肩を小さくしてトオルくんに擦り寄る。


「……もしかして俺、余計なこと言っちゃった系?」


「はい。確実に、そのようですね」
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