Beast Love
「ほな、気ぃ取り直して、主役のマサトが帰宅するシーンからやるでぇー。はい!」


白虎町くんの仕切り直しで演技が再開され、マサトが台詞を読み上げる。

「”なんでお前、まだいるんだ? 帰るか先に寝てろって電話で言っただろ”」



主人公が家に帰宅し、ヒロイン役の私が手料理をふるまうシーンなのだが。


「”うん、まぁ……そうなんだけどね。あ、残業してたならお腹空いてるでしょ?”」



この恋人同士の台詞に、毎回恥ずかしさで悶絶死しそうになる。


(……はぁ〜〜! 演技とは言え、マサトの彼女役なんて恥ずかしいよ!)

度々交わされるこの恋人同士のやり取りに耐え抜くメンタルが、私にはまだ無い。


それが演じる上での、もうひとつの障壁。
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