Beast Love

「おい、ポチ公。やる気あんのかよ? 全っっ然、セリフ覚えれてねぇじゃん」


あー、不良にカツアゲされる側の気持ちってきっとこんな感じなんだろうなー、怖いなーっと思いつつ、眉間に皺を寄せている男に弁明する。


「うん、ごめん。明日までにはちゃんと半分くらいは覚えてくるからさ……。だから、ごめんね」


素直に謝れば、不意を突かれたように一瞬黙る。



……が、すぐに腕を組んで仁王立ちのまま、床にしゃがんで片付けを進める私を見下ろしてきた。

「今日、半分覚えて帰れ。練習、付き合ってやる」


ありがたいような、ありがたくないような申し出に、心の声が漏れる。

「え、……えぇ〜〜……。優しさの裏になにかありそうで、怖い」

「おい、心の声ダダ漏れしてっぞ」


こうして他の人よりも覚えの悪い私は、もう少しの居残りが決定してしまった。


「……天音さん、大丈夫かな」

遠くではそんなやり取りを不安そうに見つめるトオルくんの姿が、視界の片隅に映り込んでいた。
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