Beast Love
ーー……1時間後。


「〜っ! だーかーらー、俺の台詞のあとに、お前だって言ってんだろ! 何回やり直すんだよ」


黄昏の教室でふたりきりというシチュエーションにテンパった私は、さらなる失態を繰り返していた。


順番をすっ飛ばすわ、台詞は詰まって出てこないわで最悪だった。

「そっ、そんなに怒らなくても良いじゃん! 次はちゃんとやりますぅ〜」


「可愛くねぇー」


強がってそうは言い返すものの、こうして練習に付き合ってくれるマサトには少し申し訳ない気持ちもあった。


……少し、だけど。



集中力が切れたのか、机に台本を放り投げて椅子に腰を下ろした彼に、口を尖らせる。


「……やけに真剣に取り組んでるよね、文化祭の準備。私、貴方はこういうことはもっと面倒くさがる人だと思ってた」

「……あー、去年とかはテキトーにやってたぜ? でも、今年は……」


そこで彼は、意外なことを口にする。


「ヨウの妹が文化祭に来る、って聞いたからよ」


「……白虎町くんの、妹?」

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