Beast Love
「……あれ、もしかしてマサト……?」



拡散する俺の声を拾い上げたアイツが、呑気な顔して近づいて来る。


後方では、面白くなさそうに不貞腐れたトオルがこっちを見ていた。


……自分から『俺のことを好きになるな』と突き放したクセに、他の男の所に行くんじゃねぇと難癖つけて首輪をつけそうになる自分の行動に、笑えてくる。


そんな苦悩も知らず、目の前にいるお人好しは腑抜けた顔して笑うんだ。


「はぁ? 誰がこんな芋子を彼女にするかよ」


「はぁー?! 何勝手なこと抜かしてんのよ!? コッチだってねぇ、あんたみたいな暴力男、願い下げだわ!」


お前が笑ったり怒ったりするたびに、この気持ちが抑えきれなくなりそうな痛みを、胸にしまい込む。




いつか本当に、抑えきれなくなるその日まで。
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