Beast Love
***



暴君に抱き寄せられたかと思えば、次は聡明なイケメンに壁ドンされている私。


これは夢じゃなかろうか、と頭がぼんやりする。


(『なんでも聞きます』とは言ったけども、まさかそんなお願いをされるなんて、微塵も考えてなかった……っ)



蒸し暑い教室に流されそうな脳内に、喝を入れる。


(し、しっかりするのよ天音 希! イケメンが放つ雰囲気に負けちゃダメ!! 自分の意思を強く持つんだ!)


不意に顔が近付いて来て、顎を少し持ち上げられる。



「返事は?」


(ああぁぁぁぁぁ、負けそうううう! イケメンが放つ甘美な雰囲気に心が負けそうぅぅぅぅ!)



「ト、トオルくん? そ、そもそも、そういう台詞は好きな人に言うものだよ? 気になる程度で言ったらダメだと思うなぁ」



緊張で両肩を上げながら、反論してみせる。


「トオルくんは私のこと、気になる程度で別に好きではないんでしょう?」


「じゃぁ、前言撤回。超好きだから、俺のものになって」



反論するんじゃなかったと、激しく後悔した。



顔が赤面して、私はそれ以上なにも言えなくなってしまったから。


「沈黙するのは肯定してくれたってことかな?」


「あ、……ううっ、……」


恥ずかしさが込み上げてくる。


迫り来るトオルくんから逃げ出す道など、見つからなくて。

追い詰められた私は…………こくりと、微かに頷いてしまった。


ゴリ押しで勝ち得た告白の結果を、トオルくんは満面の笑みで受け取る。

「よしっ。じゃぁ、卒業までよろしくな」
< 252 / 548 >

この作品をシェア

pagetop