Beast Love
私の顎をつまんでいた指先が、力を失う。



「ちなみに卒業するまでに絶対、俺のこと好きにさせるから。覚悟しといて」


彼はまるで王子様のようにごく自然に、おデコにキスを落としていった。



熱された内側から眺める景色が、離れゆく彼の後ろ姿が、スローモーションに見える。


人の気配が無くなり、私は声にならない声で、雄叫びを上げた。


「ひ、ひぃぃぃぃぃ!! なんだ今の! 違和感無さすぎて、抵抗するのも忘れてしまった!」



さっきまでマサトにドキドキしていたはずなのに、トオルくんの大胆な行動に、ドキドキが上塗りされている。


……私はこれからこうして、誰かへの想いも一瞬で消してしまうのだろうか?


そんな自分がちょっぴり図太く、複雑に思えた。

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