Beast Love
「デュフフ、我がクラスの花がコソコソと密談している……。これは恋の匂いがしますねぇ、ドプフォ! まさか僕のことを噂して……」



「失礼を承知で申し上げますが、恋バナからは縁遠い貴方が恋バナに反応するなんて正直、驚きです」


なんだかよく分からないが何か変な感違いをしているオタクくんに毒を浴びせて正気に戻してあげた私は、慈愛に満ちていると思う。



「オウフドプフォ! 冗談ですよ、冗談!」



ちなみにちょくちょく入る呪文のような言葉は、彼の笑い声である。


時々、「フゴッ!」っとどこから出ているか不明な空気音も彼の特徴的な笑い声のひとつだ。


眼鏡をクイッと上げて凛々しい表情を作り直したオタクくんが、本題に入る。


「それはそうと、実は僕、裏方の作業がひと段落ついたので、演者さんたちの練習を手伝いに来たんです」



どうやら私たちに協力しに来てくれたようである。


……けれど、ハルカくんは「うーん」と悩んだ後に、別の人物を手伝ってあげて欲しいと口にする。


「あー、そうなの? 僕とノゾミちゃんはふたりで練習出来てるからさ、主役の鳳凰くんとか手伝ってあげた方が良いんじゃないかな? 台詞、1番多いしさ」


マサトの名前が出た途端、昨日のことを思い出してしまった。


ビクリと肩が跳ね上がり、身体が変に熱を帯び出す。
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