Beast Love
玄関の扉をスライドさせ、「ただいまー」と帰宅を祖母に知らせた後に自室に向かう。



鞄からトークアプリからのお知らせを受信しているそれを取り出し、画面をタップする。


「あ、いっちゃんからメッセージが届いてる。なんだろ?」


トークアプリを開いてみれば、そこには最近ご無沙汰だった親友からのメッセージが。


《文化祭、来週末だよね? ノゾミんの演劇見に行きたいから、チケットの手配よろしく〜》




桜島高校の文化祭は、土曜日に開催される。



そのため、地域住民や他校の生徒も参加可能なのだ。



「えーっ! マジで?! 見に来るの?! いっちゃんが来るとか余計に緊張する〜」



ちなみに、地域住民や他校の生徒が文化祭に参加するには、桜島高校の生徒たちが事前に配布されている”入校許可証”とは名ばかりの安っぽ〜いチケットを、桜島の生徒から直接譲り受けなければならない。


チケットには学生証に書いてある学生番号が記入されており、もし何かトラブルが起こった際には誰が招待した人物なのかが分かるようになっている。


「あー、はいはい。《近々、郵便で送ります》っと」



文化祭の本番が、来週末にやってくる。



問題児だらけのクラスが演じる劇は果たして、成功するのだろうか?


「乞うご期待、っとでも言っておこうかな。あーあ」



畳の上で大の字になって寝転ぶ私のため息だけが、部屋に響いていた。



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