Beast Love
さっきまでとは明らかに雰囲気を変えて青ざめ始めた前島 いのりを心配し、小雪がその場に立ち止まる。
「……いっちゃんさん? ……だ、大丈夫?」
「あ、……うん、まぁ……」
通行人の邪魔になるなんて微塵も気にせず、中央に陣取ったまま我が物顔で笑い声を上げる集団から、目を離せない。
少女の胸には、小さな怒りの炎が灯る。
(……あんたらがイジメたせいでノゾミんは、ずっと苦しんでたのに……よくもそんな風に笑えるよね)
「……あの人たちが、どうかしたの?」
小雪の質問には答えず、動向を伺っていた前島 いのりの瞳が、大きく見開かれた。
「城之内〜。そろそろ体育館で演劇が始まるらしいぜ?」
「おお。体育館行こうぜ?」
(ダメ、行かないで……っ!)
体育館では、彼女の親友である天音 希の演劇がもうすぐ始まる。