Beast Love
「うぃーっす。遅れて悪い」

「みんな、お待たせやで〜」


掛け声の合間を縫って、気怠そうなマサトと白虎町くんが教室にやってきた。


「あ、………………」

「……………………」



一瞬、マサトとちらりと視線が合ってしまう。


何か言われるのかと身構えていたが、彼は何も言ってはこずにクラスメイトに向けて言葉を発する。



「あのさぁ、演出で変えてぇ場所あんだけど、いいか?」



そして予想だにしない提案を、みんなに持ちかける。



「俺とポチが絡むシーンを、観客から見て、ポチの背中が見えるようにしてくれ」



つまりそれは、私の顔が観客には見えないように立ち位置を変えるということで…………。


……あれ? 私、なにか悪いことでもしたっけ?



「横向きから縦に、立ち位置を変えるってこと? 今まで通りに演じた方が、混乱もなくていい気もするけど……」


他の男子が念の為に確認すると、彼は一切の迷い無く「まぁそういうことだから、よろしく頼むぜ」と言い切った。
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