Beast Love

ーー…………天音 希が出て行った教室内では、白虎町が渋い顔をして鳳凰 正人の肩を小突いていた。



「いくらなんでも言いすぎやで。……まったく、なんでマサトは不器用な守り方しかできへんのかなぁ」


「……うるせーよ」


視線を斜め下に落として微かに右耳を触る、これは鳳凰 正人が珍しく気落ちしているサインだった。


さすがに反省の色を見せている友人に免じて、白虎町は大きく溜息を吐く。



「はぁー。……まぁ、トラブルメイカーの隣を歩き続けて何年も経つからな、俺もこういう役回りはもう慣れたけど。天音ちゃんを連れ戻してきたるわ、しゃーなしやで」


白虎町は不器用すぎる鳳凰 正人のフォローをすべく、過剰に傷付いてしまった天音 希の背中を追いかける。



少し張り詰めた空気もなんのその、大金を夢見る男たちは先ほどまで起こっていた諍いを気にもせずに、何食わぬ顔をして着々と準備を進めている。



動けずにいるのは、悔しそうに唇を噛み締めている鳳凰 正人だけで。



「俺だってなぁ、上手いこと助けてやりてぇけど……あんな胸糞悪い話聞かされて、平然としていられっかよ……」



親友の前島 いのりから全ての真実を聞かされた男は、決意を新たに拳を握る。


「……ノゾミのことは、意地でも俺が守ってやる」