Beast Love
***

心臓が破裂しそうに脈打っても、肺が潰れそうなくらい痛くっても、とにかく廊下をひた走った。


頭上に輝く太陽から差し込む光が、廊下を熱している。



ー『ポチ公の顔が見えないように、演出変えるぞ』ー
ー『あと、最後の舞台挨拶も出んなよ? 大根役者は大人しく引っ込んでろ』ー




いつもなら、『何よー、私だけ除け者にしようったって、そうはいかないわよ?! 精いっぱい頑張ってやるんだから』ってくらい、言い返せるはずなのに……。



急に、喉が詰まって、返す言葉も出なくなってしまった。


本当のことを言われただけで、どうしてこんなにも胸が軋むのだろう?



突き放されたのが、そんなにショックだったのだろうか、私。


腑に落ちない脳内で曲がり角を曲がると、突如として目の前に現れた綺麗な女の人にぶつかってしまった。


「へぶっ!」
「うわっ?!」


しかし、女の人の身長は私よりも高くて、ぶつかった胸はカチカチに硬くて。


「っ、痛…………、あれ? 天音さん?」

「……?!! ト、トオルくん?」


私がぶつかった相手、それは男子トイレでキャバ嬢を演じるためにメイクを施し終えた、青龍院 透くんだった。

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