Beast Love
「……天音さん?」


トオルくんの声に顔を上げれば、彼もまた悲しそうな表情を浮かべていて。


「……そうだよな。強引に付き合えと迫って、そのうえ言いたくないことまで言わせようとするなんて……。ごめん、君の気持ち、全然考えてあげれてないよな。でも、」



壊れ物を扱うかのような優しい手が、私の頭を撫でる。



「俺にはそれくらい天音さんしか見えてないんだ。俺には……君しか必要ない。ここ最近ずっと考えてるよ、どうしたら天音さんを笑顔にしてあげれるかって。だからこそ、俺の大切な人を泣かせたやつが許せないんだ」


「トオルくん…………」



頭を撫でていた手が、私の手のひらに重なった。


「どんなことがあっても、俺は天音さんの味方だよ」



心に光が差し込むようなむず痒い嬉しさと安心感が、全身を走り回る。



「うん、ありがとう…………」


っとその時、廊下から「天音ちゃ〜ん」と私の名を呼ぶ白虎町くんの声が響いてきた。



返事をする暇も無く、息を切らせた白虎町くんが慌ただしく曲がり角から現れる。

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