Beast Love
そしていよいよ、舞台はクライマックスに突入する。



部下の裏切り、リストラ疑惑の浮上、恋人との喧嘩……


それら全てが自分自身の力で良い方向に変えれると知った死にたがりの主人公が、ロリっ子閻魔大王様に『生き返りたい』と願い、最後に恋人と仲直りをする場面を迎えていた。



暗転した舞台では、ナレーション役の玄武くんが時間を稼いでいる間でセットを変えなければならないため、演者以外のクラスメイト総出で準備に取り掛かっている。


「……よし、これを片付けて……」
「……早く夜景のセット、持ってきてくれ」


隙を見てずっと舞台に出ずっぱりだったマサトが、ほんの一瞬だけ舞台袖に帰ってきた。



「あっっつ!!! 誰か水くれ」


彼の額は、長い間スポットライトの光を浴び続けていたせいで、たま汗が滲んでいる。


ネクタイを緩め、喉を鳴らして水を飲み、肩を上下させて口元を拭っているマサトは文字通り、フェロモン全開である。



かと思いきや、彼はズンズン足音を鳴らしてこちらに近付いてきた。
< 288 / 548 >

この作品をシェア

pagetop