Beast Love
緊張の、ラストステージ。
《優子! 本当にごめん。俺のためにしてくれたのに、酷いこと言って……》
泣いて家から飛び出した恋人を追いかけ、黄泉の国から生き返りを果たした主人公が改心し、恋人に愛の言葉を送るワンシーンで。
マサトの迫真の演技とみんなの演出のおかげで、観客の意識は舞台の中にうまく溶け込んでいた。
大勢の人間が密集しているにも関わらず、体育館内は咳払いひとつがいつまでも反響するくらいに、静かだった。
《私もごめんね。でも、ちょっと嬉しいな。そんなに必死になって後を追いかけてきてくれる智くんの姿を、見れるなんて》
誰もが体育館の壇上で演じる私とマサトの姿を、熱い眼差しで追っている。
《ああ。俺はもう、決めたんだ。何からも逃げないって。目を逸らさないってな。だから、優子のことも……その、真剣に考えてるから》
照れ臭そうに髪をかく彼の魅力に、鼓動が早くなる。
《大好きだ。優子》
演技だと分かっているのに、身体が熱くなる。
(……あれ? そう言えばさっき『最後に一発ブチかますぞ』って言ってたけど、結局なんのことだったろ、………って、えっ?!)
最後の台詞を言い終えたマサトが急接近して、私の肩を掴む。
そして誰にも聞こえないような声で、こう言った。
「目ぇ閉じろ、ポチ公」
「ちょ、ちょっと、なにする気?!」
「なにって、キスするってことくらい見りゃ分かんだろ」
こんなの、台本にも載っていなかった流れだ。
《優子! 本当にごめん。俺のためにしてくれたのに、酷いこと言って……》
泣いて家から飛び出した恋人を追いかけ、黄泉の国から生き返りを果たした主人公が改心し、恋人に愛の言葉を送るワンシーンで。
マサトの迫真の演技とみんなの演出のおかげで、観客の意識は舞台の中にうまく溶け込んでいた。
大勢の人間が密集しているにも関わらず、体育館内は咳払いひとつがいつまでも反響するくらいに、静かだった。
《私もごめんね。でも、ちょっと嬉しいな。そんなに必死になって後を追いかけてきてくれる智くんの姿を、見れるなんて》
誰もが体育館の壇上で演じる私とマサトの姿を、熱い眼差しで追っている。
《ああ。俺はもう、決めたんだ。何からも逃げないって。目を逸らさないってな。だから、優子のことも……その、真剣に考えてるから》
照れ臭そうに髪をかく彼の魅力に、鼓動が早くなる。
《大好きだ。優子》
演技だと分かっているのに、身体が熱くなる。
(……あれ? そう言えばさっき『最後に一発ブチかますぞ』って言ってたけど、結局なんのことだったろ、………って、えっ?!)
最後の台詞を言い終えたマサトが急接近して、私の肩を掴む。
そして誰にも聞こえないような声で、こう言った。
「目ぇ閉じろ、ポチ公」
「ちょ、ちょっと、なにする気?!」
「なにって、キスするってことくらい見りゃ分かんだろ」
こんなの、台本にも載っていなかった流れだ。