Beast Love
しかし、観客席からは私とマサトは唇が重なったように見える角度らしい。
「イヤーーーッ! マサトくんの唇がぁぁぁぁ」
「フゥ〜! やべぇ、文化祭でこんなもん見れんのかよ!やっべー!」
「こんなにドキドキした文化祭、初めてだな!」
ライトが消えて暗闇に包まれる舞台の上でゆっくりと離れていく暴君の口元は、満足そうに笑っていた。
「お預け食らって残念そうな顔してんじゃねーよ。本気でキスすると思ったのか?」
「だっ、だって、雰囲気的にそんな感じだったじゃない……」
「本気で相手して欲しいなら、今日の夜は空けといてやるけど?」
相変わらずの上から目線に、イラっとした不愉快さが募る。
「…………んなっ!」
平気で乙女心をもて遊ぶコイツは、地獄に落ちるべきだと思った。