Beast Love
全身にびっちょりと汗をかいた自分が、馬鹿らしく思えて。


鳴り止まない歓声が、遠くなる。


「誰があなたなんかと……っ! ふざけるのも、大概にして!」


雰囲気に飲まれて少しでも流されてしまった自分が、恥ずかしかった。



舞台挨拶にも出るなと命令されていたことを思い出し、闇に紛れて舞台を走り去れば、耳に残る歓声と拍手、賞賛の指笛。


今の愚かしい自分には似合わないものばかりで、息苦しい。



「天音さんっ、」
「ノゾミちゃん?!」


トオルくんとハルカくんの声が聞こえたした気がしたけど、振り返れなかった。



特に、想いを寄せてくれているトオルくんの声は、罪悪感を加速させる。


「わたしっ、……外の空気、吸ってくる……」


一瞬でもマサトを受け入れそうになった自分を否定したくて、一刻も早く体育館から出て、外の空気を吸いたかった。



扉を開けて裏口から外に出れば、カッと照りつける太陽の光が眩しくて、思わず目を細める。



「……なにやってんだろ、自分……」

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