Beast Love
袋に入れていた上履きを取り出し、体育館を後にしようとする女子生徒を追い掛け、声を掛ける。
「こんにちは。いきなりで悪いんだけど、さっき話してた女子生徒のことについて尋ねたいんだ。ちょっと良いかな?」
突然、私服姿の男子に声を掛けられ、戸惑いを見せる女子生徒たちだったが……
「実はさっき話してた”天音 希”さんなんだけど、俺の元クラスメイトでさ……”片思い”していた人なんだ。彼女のこと、少しで良いから教えてくれないかい?」
彼の内面の歪さを感じさせない笑顔に騙され、女子生徒たちは警戒心を解いてしまう。
「なんだ、そういうことね? 良いよいいよー。何でも教えてあげるっ」
「私たちに協力できることがあれば、何でも協力するよ! 告白、頑張って!」
”片思いをしていた相手”だと聞けば、大概の女子は彼を応援してしまうだろう。
「ありがとう。天音さんって今、本当にこの桜島高校にいるんだよね?」
女子の気持ちを巧みに転がす会話術に、仲間たちは呆れていた。
「出たよ、城之内の悪いところ〜」
「あーあ。天音のやつ、せっかく城之内から逃げれたのになぁ。可哀想に。くくっ」
失くしていた懐かしい玩具を見つけた少年のような、嬉しそうな無邪気な顔。
そんな彼らの表情に、なぜか西園 香恋だけは唇を噛み締めて青ざめていく。
「また、あの悪夢が始まる……」
その身体は、恐怖で震えていた。
「智くんに見つかったら最後だよ、逃げて……ノゾミ……」
願いのような小さな祈りは、体育館裏でうずくまる天音 希には、届かない。
「こんにちは。いきなりで悪いんだけど、さっき話してた女子生徒のことについて尋ねたいんだ。ちょっと良いかな?」
突然、私服姿の男子に声を掛けられ、戸惑いを見せる女子生徒たちだったが……
「実はさっき話してた”天音 希”さんなんだけど、俺の元クラスメイトでさ……”片思い”していた人なんだ。彼女のこと、少しで良いから教えてくれないかい?」
彼の内面の歪さを感じさせない笑顔に騙され、女子生徒たちは警戒心を解いてしまう。
「なんだ、そういうことね? 良いよいいよー。何でも教えてあげるっ」
「私たちに協力できることがあれば、何でも協力するよ! 告白、頑張って!」
”片思いをしていた相手”だと聞けば、大概の女子は彼を応援してしまうだろう。
「ありがとう。天音さんって今、本当にこの桜島高校にいるんだよね?」
女子の気持ちを巧みに転がす会話術に、仲間たちは呆れていた。
「出たよ、城之内の悪いところ〜」
「あーあ。天音のやつ、せっかく城之内から逃げれたのになぁ。可哀想に。くくっ」
失くしていた懐かしい玩具を見つけた少年のような、嬉しそうな無邪気な顔。
そんな彼らの表情に、なぜか西園 香恋だけは唇を噛み締めて青ざめていく。
「また、あの悪夢が始まる……」
その身体は、恐怖で震えていた。
「智くんに見つかったら最後だよ、逃げて……ノゾミ……」
願いのような小さな祈りは、体育館裏でうずくまる天音 希には、届かない。