Beast Love
「こんばんは、天音さん。例の”秘密の悪戯”のお誘いに来たよ」
和やかに挨拶を交わす玄武くんとは違って、トオルくんは不機嫌そうに視線を斜めに逸らす。
「一緒に来いって、アキラに無理矢理連れて来られたんだ」
そっぽを向いている彼に対し、バスケ部エースは笑いながら背中を叩いている。
「またまたー。『教室で天音さんが行きたそうにしてたよ』って教えたら、目の色変えてついて来たのはトオルの方だろ?」
矛盾を指摘されたトオルくんの頬は、暗闇でも分かるくらいに赤く染まる。
「……悪いかよ、天音さんが好きで」
ぼそりと呟かれた台詞に、私まで赤くなる。
「え、あ、ありがとう」
ぎこちないふたりを見つめていた玄武くんが、苦笑まじりに息を吐いた。
「はいはい。君らがラブラブなのは分かったからさ、早く行かないと先に行ったマサト達に怒られるぞ?」
そう言って、玄武くんは玄関先に止めてある自転車を指差す。
「天音さんはトオルの後ろに乗りなよ。俺は他のクラスメイトを迎えに行ってから、学校に行くからさ」