Beast Love
いつも登下校で通る道が、街灯やネオンが灯り、別の顔を覗かせている。



トオルくんの背中にしがみつきながら、さっき玄武くんが私たちから離れたのは、きっといい雰囲気を作るためなんだろうなとか考える。


まるでベルベットの生地がゆっくりと垂れてくるような静かな夜空には、熟れた果実のように大きな無数の星が輝いていた。



髪を後方にさらっていく風は、6月ということもあってか少し生暖かい。



薔薇プールを見てみたいと願う私が意外だったのか、ペダルを回しながらトオルくんがあることを問い掛けてくる。


「天音さんは、ロマンチックなものが好きなのか?」



「うん! 凄く好きだよっ。カレイドスコープとか春に初めて行ったけど、大好き場所になったなー」


そうか、と頷いた後に、ぎゅっとハンドルを握り締めた音が聞こえた。


「ヤバい、……”好き”とかそんな言葉に、いちいち反応してしまう。俺に対して言ったんじゃないって、理解してはいるのに」

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