Beast Love
「あ、いや、うん、ごめんなさい……」

息を吸うたびに苦しいのは、生暖かい風のせいだけじゃない。


私の知らない”ときめき”を、彼がくれるから。



「春に行ったカレイドスコープって、マサトもいたんだろ?」



短く甲高いブレーキ音とともに、自転車が止まる。


「なぁ。唐突で悪いけどキス、してもいい?」


落ちてくるような星空の下、路地裏の片隅で。



両手首を掴まれて、逃げ道も塞がれて。



人目を避けるように、唇を重ねた。


私はトオルくんの嫉妬を受け止めるのに必死で、息も絶え絶えに快楽に堪える。


「……このまま、君を連れ去りたいな」


吐息混じりに囁くけれど、見上げればいつものトオルくんに戻っていて。



「時間取らせてごめん、学校に行こうか」



クールな仮面の下に、溢れんばかりの愛情を隠しているトオルくんに導かれつつ、私は静かに頷いた。



< 311 / 548 >

この作品をシェア

pagetop