Beast Love
手渡された用紙を誰にも見られないようにして、そそくさと席に戻る。


恐る恐る開いてみれば、学年順位は…………



「うそ! やったぁ!」


なんと、成績はかなり上がっていた。


急いで後ろを振り返り、同じく結果を眺めていたトオルくんにピースサインを送る。



彼も同じく微笑みながら、手を振ってくれた。


万年赤点の私が全教科、平均点を取れるなんて奇跡に近い。


それもこれも、テスト勉強に付き合ってくれたトオルくんのおかげである。



口パクで「ありがとう」と伝えると、「それは、天音さんの実力だよ」っと、口パクで返されてしまった。


成績の悪さに阿鼻叫喚が木霊する教室内で、その集団に混ざらず穏やかな気持ちで成績を眺めれたのは、これが初めてだった。


雑音をかき消すために手のひらを数回叩いた宇佐美先生の芯のある声が、空気を刺す。


「はい、静かにーっ! 前にも言った通り、今回のテストで赤点取った子たちには補習が待っているので、お楽しみに。無事、赤点を回避した子たちはおめでとう! 夏休み中は、受験に向けてしっかり準備してね」


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