Beast Love

「ねぇ、一緒にお昼ご飯食べない?」


勇気を振り絞って声を掛けた、初夏の午後。


「えっ? で、でも…………」


戸惑うカレンは私の後ろで唖然としている友人を見つめている。


「信じられない、そんなやつ誘うなんて! もうノゾミのこと、相手にしてあげないからね」


友人たちはキツイ口調で私を突き放し、どこかに行ってしまった。


(別にいいよ。あなた達みたいに、機嫌を取り合って上辺だけで付き合う関係なんて、友だちって呼ばないし)


心の中では舌を出しながら、現実では「みんな、ごめんね」と頭を下げる。


眉を八の字に下げたカレンの方へと身体を向けて、お弁当箱を机に乗せる。


「ほら、もう何も気にすることないからさ。一緒にお昼ご飯、食べよう?」


人間不振の塊とでもいったような目で、彼女は私に尋ねる。

「…………どうして私なんかに、ここまでしてくれるの? あなたも、イジメられるかも知れないんだよ?」



「どうして、って聞かれても……。ただ、あなたを助けたいって思ったからかな? あと先のことは深く考えてないよ」


素直な気持ちで答えれば警戒を解いて、少し笑ってくれた。


「……バカな人。でも、ありがとう」

< 329 / 548 >

この作品をシェア

pagetop