Beast Love
「や、やっぱり……宇佐美 翔って、宇佐美先生のことだったんだね……」


一切の疑問が、櫛で髪をすくようにパラリと解けて来る。


宇佐美先生がなにかとマサトのことを気にかけているようにも見えるのは、こういう事情があったからなんだ。


同じく、遊園地に行く前に入った喫茶店でマスターの宇佐美 昇さんとマサトがやけに親しかったのも、そういうことだろう。



けれどマサトは、助かったふたりが当時は憎くてたまらなかったと言う。



「”なんで、誠司さんは死んで見ず知らずの双子が助かったんだ”って、何度も悔いたさ」


憧れていた人物が取ったその選択は、正しかったのか。


けれど、問い質したところで答えは返ってこない。


そして彼は、とんでもない事実を打ち明ける。


「当時、小学生だった俺は、宇佐美兄弟がこの町を牛耳ってる不良グループのトップだって聞いて、直々に殴り込みに行った。どんな奴らがどんな顔して誠司さんの代わりに息してんのか、確認したかったからな」


(この話、どこかで聞いたことあるような気が…………あっ! そう言えば、……)


玄武くんを助けるためにレンタルコートで3対3のバスケ勝負をした時に、相手チームの大学生たちが言ってた。



ー『鳳凰 正人、桜島高校でケンカが馬鹿強いっていう、要注意人物……』ー


ー『あっ、もしかして……。小学生で当時この辺を仕切っていた【rabbit】って不良グループに単身乗り込んだっていう、あの伝説の…………』ー



あの噂は、本当だったんだ……。



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