Beast Love
「風呂溜めてやるよ」ってマサトは言ってくれたけど、流石に悪い気がして軽くシャワーで済ませた。


あいつが使ってるシャンプーやボディソープの香りが、浴室に充満する。


洗面台に置いてあるワックスの銘柄にさえドキドキしてしまう、自分がいて。


ずっと、背中に羽が生えて浮いている……そんな気分だった。



「お風呂、お先です」


リビングに戻り肩からタオルを垂らして一礼すると、マサトの料理を食べたであろうカナエさんが「律儀な子だね」と笑いながら、私を椅子へ座るよう手招きする。


「マサトー、あんたも風呂入ってきな〜。洗い物はしとくから」

椅子から身を乗り出して、自室でテレビを見ているであろう息子に呼びかけるカナエさん。


「はいはい」


気怠そうに髪をかきあげながら部屋から出てきたマサトと一瞬、目が合う。


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