Beast Love
「…………なんだよ?」

「な、なにもありません」


(母親と、こんなごく当たり前の会話を交わしている丸みを帯びた男子にキュンとしてしまっただなんて、言えない……)


すぐに視線を逸らした私を見て、対面に座っているカナエさんがニヤニヤとしながら飲んでいたビール缶をテーブルに置く。


「マサトぉ? 好きな女の子が入ったあとのお風呂だからって、抜いちゃ駄目だぞ〜?」


意味が分からず首を傾げる私を指差しながら、暴君はまた暴言を吐いてきた。


「ばっ! 誰がんなことするかよ、そんな芋女相手に!」


「んなっ! なによ、喧嘩売ってるの?!」


言い合うふたりを他所に、カナエさんはゲラゲラとお腹を抱えて笑っている。


「あーあ、誰かさんの介抱で疲れたから、風呂入ってくるわ。いいか、覗くんじゃねぇぞ?」


「誰が覗くかっ!」


ひとしきり罵倒し合ったあと、彼は浴室に消えていった。

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