Beast Love
「あーあ、面白かった。あんなに露骨な態度を取るマサト、久しぶりに見たなぁ〜」


上機嫌でビールを嗜む母親を前にして、私はどのタイミングで事情を説明しようか迷っていた。


どこから話せばいいのか、とこまで話せばいいのか……定まらない。


そんな迷いを感じ取ったのか、カナエさんは私にそっと麦茶を差し出す。


「なにも話さなくてもいいよ。大体の事情は、マサトからさっき聞いたから。……ノゾミちゃん、大変だったね」


マサトから事情を聞いたときに、私の名前も聞いたのだろう。


大切そうに名前を呼んでくれたカナエさんの包容力は、私の冷えた心さえも包み込んでくれた。


「わ、私の口から……直接、話を聞かなくてもいいんですか?」


あいつの変に優しいところとか、カナエさんから受け継いだ大切なものなんだろうなぁ。


憎たらしい口調や性格は、生まれつきだろうけど。

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