Beast Love
いろんなことがあった今日という日に終わりを告げて、私は和室に敷いてもらった布団の中に潜り込んだ。
疲弊した身体が、布団の柔らかさに溶かされていく。
「あー、疲れた…………」
正直に言うと、マサトには感謝してる。
偶然、通りかかったとは言え私を助けてくれたのだから。
もぞもぞと寝返りを打ち、眠気に勝てず瞼を閉じた……その時だった。
(……襖の向こうに、誰かいる?)
襖越しに、人の気配を察知する。
同時に、あの気だるそうな低い声が私の名を呼んだ。
「……おい、ノゾミ。もう寝てるのか?」
なんの用事だろう?
そう思いつつも、うつらうつらと意識を飛ばしながら彼の次の言葉を待つ。
「俺さ、この部屋に充電器置きっぱなしなんだけど……襖の隙間から、放り投げてくんね?」
確かに、私の枕元には白い充電器が放置されていた。
重たい腕を伸ばして掴み上げようとすれば、人の返事を待たずしてマサトは襖に手をかける。
「……寝てるなら、勝手に入って取るぞ」
もういいや、いっそのこと寝たふりをして自分で取りに来てもらおう。
その方が、また変に喧嘩もしなくて済むし。
そう思い、私は伸ばしていた手を布団の中に戻して、寝たふりを始める。
やがて襖が数センチ開き、リビングの明かりと共にマサトが部屋の中に入ってきた。