Beast Love
「気持ちの悪いことを言うな。殴り込みに行くなら、俺も加勢し、」


それ以上は言わせるかと、俺も俺で意地を張る。



「やめとけよ。人を殴ったこともないような面したやつが言うセリフじゃねぇって、それ。俺ひとりでやるさ。お前はポチ公のそばにいてやるだけで、充分に役割を果たしてるだろ」


「けど、」


「それに、お前らには”未来”があるんだ。他校の生徒と殴り合えば、大学への推薦を取り消されるどころか、退学だってあり得る。お前らは、”未来”のない俺とは違うんだ。あんまり無理するなよ」


俺には未来はない、そう告げれば「それは反則だ」とトオルは唇を噛み締めた。


「そんなことを言われたら、返す言葉が見つからない」


「ああ、だから言ってんのさ。俺はお前の親父の病院に通ってるんだ、そのことはお前が一番よく知ってるだろ?」


本当になにも返さなくなってしまった友人の居た堪れない姿に、少しだけ良心が痛む。


トオルが悪いことをしたわけでもない、ましてや俺の病気を治せない病院が悪いわけでも、トオルの親父が悪いわけでもない。


ただこの体に巣食う病が、俺の天命だったというだけだ。
< 368 / 548 >

この作品をシェア

pagetop