Beast Love
「そういうわけだから、トオルは大人しくポチ公を連れて帰れって。下でご主人様の到着を、尻尾振って待ってるぜ?」


「……ひとまず、そうするよ。だが、無茶をしてはいけないのは……マサト、お前のほうだ。なにかあったら、連絡しろよ」


納得はしていないが渋々、踵を返したトオルの背中を見送った。


『俺に”未来”はない』、自分で口にしてみればなんというか、体から骨が抜かれたような喪失感に襲われる。


そうか、これが……


「いざ自覚してみりゃ、虚しいもんだな」


ぽつりと呟いた言葉は、眩しい夏空の青さに吸い込まれていった。
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