Beast Love
***


ひとまず天音さんを家に送り届けた俺は、「迎えに来てくれてありがとう、トオルくん」と頭を下げる彼女に流されて、部屋にお邪魔していた。



「あ、お茶入れてくるねっ。座って待ってて」


「ああ、ありがとう」


こういう時、なんと声を掛ければいいのか分からない。


掛けるべき言葉が、見つからない。


まるで炭酸が喉に溜まっているような痛みが、声を詰まらせる。



「はい、お待たせ。麦茶しかなくてごめんね」


「いや、いいよ。ありがとう」


何事も無かったかのように振る舞う天音さんの方が、よっぽど大人だ。



「と、トオルくん……? 急に黙ってどうしたの?」


心配して覗き込んでくるその顔も、お茶をテーブルに置く指先でさえも、すべてが愛おしくて。


ゆえに、彼女を苦しめた男たちが、許せなくて。


『俺に”未来”はないからな』


マサトの悲哀に満ちた台詞が、頭の中で再生される。


「天音さん、ちょっと隣に座ってもいい?」


「うん、いいよ……?」

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