Beast Love
彼女の隣に膝立ちし、俺は小さな身体を強く抱き締めた。
「わっ、は、恥ずかしいよっ」
照れる天音さんを無視して、やっと見つかった言葉を彼女に届ける。
「俺の前では、無理して笑うことないよ。怖かったんだろう? 曝け出してもいいよ。全部、俺が受け止めてあげるから」
俺の肩に、水滴が落ちていく。
それは、男たちによって愚弄され、隠されていた心の傷が涙となって外に溢れ出している、証。
「ごめ、……っ。泣くつもりじゃ、なかったんだけどなぁ。トオルくんにそんなこと言われたら、だめだなぁ、私……」
よく色んな人に、他人のことを細かく見ていて凄いね、適した言葉を言えて賢いね、と言われる。
だが、それは大きな間違い。
「いいよ。俺、天音さんにだけ優しいからさ。そう言ってもらえると、嬉しい」
大切な人を傷付けたくなくて、守りたくて、ただ必死なだけなんだ。