Beast Love
初めから気付いていたんだ、俺は。



なのにそれを見て見ぬ振りをして、マサトから天音さんを奪った。


「トオルくん……。私を支えてくれて、ありがとう」


今、この腕の中にある温もりは、この笑顔は、あいつから無理やり剥ぎ取ったもの。



『お前らには”未来”があるんだ。他校の生徒と殴り合えば、大学への推薦を取り消されるどころか、退学だってあり得る』


罪悪感が重力に従って、頭の先からつま先まで俺を踏みつけてくる。



このまま天音さんと一緒に過ごしてかけがえのない人物に昇格するか、マサトの加勢に向かって推薦取り消しの馬鹿になるか。



愛か、友情か。


泣きながら胸板に顔を埋める彼女の髪を、優しく指ですくう。



「俺は、…………」


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